色川武大氏の誤字がありました。ご指摘いただきありがとうございます。修正しました。
ようこそ(^^)/
人生を豊かに生きるためには、健康とお金がとても大切と考える当サイトの管理人ぱんぱんぱぱです。
さて、みなさんは日本経済新聞を読んでいますか?
管理人は最近はさっぱりです。
しかし、4月1日号だけは、10数年欠かさずコンビニで買うことにしています。
その理由は、サントリーの広告目当てです。
2023年11月23日にご逝去された作家伊集院静さんの「新成人へ」のタイトルのエッセイがすばらしすぎて、毎年購入していました。
2024年4月1日号は、残念ながら初めて掲載されたエッセイでした。
日経新聞サントリー広告 2024年4月1日号より
空っぽのグラス諸君。
新社会人おめでとう。
今日、君はどんな服装をして、どんな職場へ行ったのだろうか。
たとえどんな仕事についても、君が汗を掻いてくれることを希望する。
冷や汗だってかまわない。
君は今、空っぽのグラスと同じなんだ。
空の器と言ってもいい。
どの器も今は大きさが一緒なのだ。
学業優秀などというのは高が知れている。
誰だってすぐに覚えられるほど社会の、世の中の、仕事というものは簡単じゃない。
要領など覚えなくていい。
小器用にこなそうとしなくていい。
それよりももっと肝心なことがある。
それは仕事の心棒に触れることだ。
たとえどんな仕事であれ、その仕事が存在する理由がある。
資本主義というが、金を儲けることがすべてのものは、仕事なんかじゃない。
仕事の心棒は、自分以外の誰かのためにあると、私は思う。
その心棒に触れ、熱を感じることが大切だ。
仕事の汗は、その情熱が出させる。
心棒に、肝心に触れるには、いつもベストをつくして、自分が空っぽになってむかうことだ。
それでも諸君、愚痴も出るし、斜めにもなりたくなる。
でもそれは口にするな。
そんな夕暮れは空っぽのグラスに、語らいの酒を注げばいい。
そこで嫌なことを皆吐き出し、また明日、空っぽにして出かければいい。
案外と酒は話を聞いてくれるものだ。
初々しいスーツ姿の新入社員の姿を見ると、つい昨日自分が入社したような気になってしまいます。
いつも弱者にやさしい目を向けてくれた伊集院静さんのご逝去を心より哀悼の意を表します。
男としての夢をすべて実現したように見え、そこには計り知れない哀しみを背負って生きてきた大人の背中が見えました。
享年73歳。あまりにも若い才能を失いました。
1 伊集院静氏を知ったきっかけ
管理人はあまり伊集院静氏にいいイメージは持っていませんでした。
絶世の美女とされた夏目雅子さんを7年間の不倫の上結ばれたからです。
六大学野球では一時レギュラーを張り、広告代理店に就職します。
その後CMディレクターとして数々の活躍をするとともに作詞家としても作家としてもデビューします。
作詞家として、日本レコード大賞を受賞するとともに作家としても直木賞を受賞。
一方、絶世の美女と謳われた夏目雅子さんと7年間の不倫の末、結婚するも白血病で急逝します。わずか2年間の生活でした。
その後、伊集院静氏は女優篠ひろ子さんと3度目の再婚をし、篠ひろ子さんの出身地である仙台市に豪邸を建て移り住みます。
しかし、実際には1年に1ヵ月程度しか住まず、東京を拠点に世界中を旅しています。
男の夢をいくつも実現できる人で、管理人はどうにも好きになれませんでした。
2 東日本大震災で被災し、姿を見てファンとなる
東日本大震災が発生した2011年3月11日、伊集院静氏はたまたま仙台にいて被災しました。
伊集院静氏は、避難生活を余儀なくされますが、一方では精力的に支援活動も開始しました。
ちょうど「大人の流儀」が2011年3月19日に出版され、2024年4月30日に閉店する予定の「金港堂書店」でサイン会の企画があり、管理人も行ってみました。
伊集院静氏を一目見ると、格好良すぎてしびれました。
女性ファンが群がっていたので、サインはもらえずじまいとなりましたが、「大人の流儀」を読むきっかけとなりました。
そこには、華麗なる業界人としての姿ではなく、生身の人間の姿が描いてありました。
20歳にして弟を水難で亡くし、35歳にして妻である夏目雅子さんを亡くしたつらい過去を引きずってもがき苦しみながら生きている男の姿が生々しく描かれていました。
うつ病になった時に夏目雅子さんが寄り添い、自然と愛が芽生えた姿に不倫という忌まわしきイメージはありませんでした。
最愛の妻夏目雅子さんを亡くしてからは、自暴自棄となり、スペインに1年のうち11か月も暮らし、収入の8割をバカラで使い果たし、お金が無くなると日本に戻ってお金を稼ぎ、再びスペインでバカラでお金を使い果たす生活を何年も繰り返したそうです。
苦しみからもがこうとして、異国の地でギャンブルと酒に耽溺する描写に、無頼派作家好きの管理人は熱烈ファンとなりました。
あの時、なんとしてもサインをもらいたかったと今でも悔やんでします。
3 色川武大さんとの出会い
類は類を呼ぶというのでしょうか。
作家伊集院静氏は、アウトロー作家である色川武大氏と出会います。
色川武大氏とは、麻雀の神様雀聖「阿佐田哲也」氏の別名のペンネームです。
麻雀放浪記は永遠のピカレスク小説の金字塔です。
二人はギャンブル旅行と称して、スペインにバカラ旅行に出かけます。
止めれば家一軒分勝てたところをもう一勝負してすってんてんとなるエピソードは、管理人の心にもグサッと刺さりました。
株式投資も同様で、あと少しあと少しと欲深くなり、売り際を見逃し、あっという間に株価が下落してしまうことがあります。
名声を欲しいがままの二人でさえ、判断を見逃すところにギャンブルの深淵なむずかしさがあるのではないではしょうか?
4 日本経済新聞のエッセイに号泣す
伊集院静氏が悲しみを背負いながらも、これからの時代を背負って立つ若人にメッセージを贈る4月1日号のサントリーの広告にすっかり虜となり、現在に至っています。
管理人はいくつかのエッセーで、結婚披露宴の新郎新婦あいさつにも活用させてもらいました。
2012年のエッセイは特に秀逸でした。
落ちるリンゴを待つな。
新社会人おめでとう。君は今どんな職場で出発の日を迎えただろうか。
それがどんな仕事であれ、そこは君の人生の出発点になる。
仕事とは何だろうか。君が生きている証しが仕事だと私は思う。
大変なことがあった東北の地にも、今、リンゴの白い花が咲こうとしている。
皆、新しい出発に歩もうとしている。
君はリンゴの実がなる木を見たことがあるか。
リンゴ園の老人が言うには、一番リンゴらしい時に木から取ってやるのが、大切なことだ。
落ちてからではリンゴではなくなるそうだ。
それは仕事にも置きかえられる。
落ちるリンゴを待っていてはダメだ。
木に登ってリンゴを取りに行こう。
そうして一番美味しいリンゴを皆に食べてもらおうじゃないか。
一、二度、木から落ちてもなんてことはない。
リンゴの花のあの白の美しさも果汁のあふれる美味しさも
厳しい冬があったからできたのだ。
風に向かえ。苦節に耐えろ。
常に何かに挑む姿勢が、今、この国で大切なことだ。
夕暮れ、ヒザ小僧をこすりつつ一杯やろうじゃないか。
新社会人の君達に乾杯。
こんな珠玉のエッセイにもう二度と出会えないのかと思うと涙で周りが見えません。
5 さらば日本経済新聞4月1日号
2024年4月1日号のサントリー広告には次の注意書きが書いてありました。
右の文章は、サントリーの新社会人向けのメッセージ広告として、2000年4月に初めて伊集院静さんが執筆された原稿です。
昨年11月のご逝去を受け、今回は、第1回の原稿を改めて掲載し、伊集院静さんからのメッセージ広告の最終回とすることと致しました。
長い間、ご愛読いただいた読者の皆様に感謝申し上げます。
これからもサントリーは、いつも若者を厳しく、暖かく応援してこられた伊集院静さんの想いを継いで、挑戦する若者を応援してまいります。
もう二度と伊集院静氏の新作エッセイが読めないのであれば仕方のない事とは思いますが、無念です。
この珠玉のエッセイが読めないのでは、管理人に日本経済新聞4月1日号を購読する理由はありません。
残念ながら2025年よりは購入は止めることとします。
さらば!日本経済新聞4月1日号!
6 まとめ
4月1日は、特別な1日です。
何十年と年をとってもフレッシュな気持ちに戻してくれる日だからです。
町ゆく新品の着こなせていない希望と不安が入り混じった新入社員のスーツ姿を見ると思わず自分の過去の姿に重ねて見てしまいます。
伊集院静氏は、そんな微妙で複雑な感情を文章にできる稀有な作家でした。
伊集院静氏のエッセイに管理人は励まされるばかりでした。
でももう二度と新しいエッセイを読むことはできません。
残念でなりません。
もう管理人には伊集院静氏のエッセイのない広告には興味も関心もありません。
来年からは日本経済新聞4月1日号を購入しないこととします。
早すぎる伊集院静氏のご逝去が無念でなりません。
ぜひ伊集院静氏のエッセイを読んでみてください。